未破裂脳動脈瘤とは

 脳血管にできた風船のような膨らみを脳動脈瘤といいます。MRIが出現するまでは未破裂脳動脈瘤はほとんど見つかることはありませんでしたが、MRIの普及と機器の進歩によりたくさん見つかるようになりました。最近ではMRI検査を100人すると、2~6人(2~6%)に未破裂脳動脈瘤が見つかると言われています。

 

未破裂脳動脈瘤の頻度、破裂率

 未破裂脳動脈瘤は破れるまでは全く無症状であることが大部分ですが、破裂すればくも膜下出血を生じます。くも膜下出血は半数以上の方が死亡するか社会復帰不可能な障害を残し、障害なく社会復帰可能な人は3~4人に1人という厳しい病気です。「破れればそんなに重篤な病気なのであれば、破れる前に治療しなくて良いのであろうか?」という疑問が生じます。では、どのくらいの人が未破裂脳動脈瘤を持っているのでしょうか?報告にもよりますが、健康成人の26%は未破裂脳動脈瘤を持っていると言われています。これは大変な数字で、100人にMRI検査をすると2~6人に未破裂脳動脈瘤が見つかることを意味します。では発見された脳動脈瘤がすべて破裂するのでしょうか?日本脳神経外科学会の事業として行われた、未破裂脳動脈瘤の全例調査(UCAS Japan)の結果では、6646例の登録をもとに解析し、年間出血率は0.64%/年、つまり未破裂脳動脈瘤を持った人のうち、くも膜下出血を起こす人は1年間に0.64%、言い換えると1000人中6.4人となります。コブが5ミリ以上の人に限定すると、1.1%/年と報告されています。

 

未破裂脳動脈瘤をどうするか? 治療か?経過観察か?

 未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、どう対処するかは大きな問題です。治療方法には脳動脈瘤の頚部に外から小さな金属製のクリップを掛けてつぶしてしまう開頭クリッピング術と、血管内から脳動脈瘤にコイルを詰め、閉塞させるコイル塞栓術がありますが、当然合併症が出現する可能性もあります。破れればくも膜下出血を起こすので予防目的で治療するわけですが、破れない可能性が高いものを治療して合併症で苦しむのであれば、元も子もないということになってしまいます。未破裂脳動脈瘤の自然経過や治療適応、治療法の選択については未確定なものが多く、現在暗中模索中というのが実情です。ただ、今までの報告から一応のガイドラインは示されています。最も新しい脳卒中の治療ガイドライン2009では、原則として患者の余命が1015年以上ある場合に、大きさが57mm以上の未破裂脳動脈瘤は治療を検討することが推奨される。また、5mm未満であっても、症状が出ているもの、破れやすい部位や形をした脳動脈瘤については治療の検討が推奨されるとされています。経過観察する場合は喫煙、大量の飲酒をさけ、高血圧を治療する。経過観察は半年から1年毎の画像による経過観察を行うことが推奨される。とされています。

 以上をまとめると未破裂脳動脈瘤は時代と共に変遷するガイドラインを参考に、年齢、脳動脈瘤のサイズや形、部位、観察中の増大変化等が治療を勧める因子となり、治療に対する相対的リスクを検討したうえで治療か経過観察かを決めることになります。

    未破裂脳動脈瘤       開頭クリッピング術後

 左が術前の3DCTAで右が術後です。脳動脈瘤の頚部をチタン製のクリップで挟むことにより脳動脈瘤は消失しています。クリップは頭蓋内に留置したままとなりますが、特に問題はありません。